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サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度とは?詳細をわかりやすく徹底解説

セキュリティ会議

 

近年、サプライチェーンを狙ったサイバー攻撃が急増しています。大企業だけでなく、取引先である中小企業がターゲットになるケースも増えており、 企業規模を問わずセキュリティ対策の強化が急務となっています。

 

こうした背景から、経済産業省は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の整備を進めています。 本記事では、この制度の概要から具体的な対応方法まで、中小企業の経営者・IT担当者向けにわかりやすく解説します。

 

サプライチェーンセキュリティ対策評価制度の概要

サプライチェーン

 

サプライチェーンセキュリティ対策評価制度は、企業のセキュリティ対策レベルを客観的に評価し、 取引先や社会に対して信頼性を示すための仕組みです。

 

制度創設の背景

 

2020年以降、サプライチェーンを経由したサイバー攻撃が世界的に増加しています。 攻撃者は、セキュリティ対策が比較的手薄な中小企業を踏み台にして、大企業のシステムに侵入するケースが多発しています。

 

実際に国内でも、自動車部品メーカーへの攻撃により大手自動車メーカーの工場が停止するなど、 深刻な被害が発生しています。このような状況を受け、政府はサプライチェーン全体でのセキュリティ強化を推進しています。

 

制度の目的と狙い

 

この制度の主な目的は以下の3点です。

 

目的 内容
可視化 企業のセキュリティ対策レベルを客観的に評価・公開
信頼構築 取引先間での信頼関係を強化
底上げ サプライチェーン全体のセキュリティレベル向上

 

いつから始まるのか

 

経済産業省は、本評価制度を2026年度末(2027年3月頃)の運用開始を目指して検討を進めています。 正式な開始に先立ち、業界別の試行運用やガイドラインの整備が段階的に行われる予定です。

 

★1・★2については既存の「SECURITY ACTION」制度として既に運用されていますが、 新たに設けられる★3〜★5の評価は2026年度下期から順次スタートする見込みです。自社が目指すレベルに応じて早めに準備を進めることが重要です。

 

評価制度の具体的な内容

セキュリティ評価

 

評価制度では、企業のセキュリティ対策を複数の観点から多角的に評価します。 具体的な評価項目と基準について詳しく見ていきましょう。

 

評価の対象分野

 

評価は大きく5つの分野に分かれています。それぞれの分野で求められる対策レベルが定められており、 企業は自社の状況に応じて段階的に対応を進めることができます。

 

1. 組織的対策
セキュリティポリシーの策定、責任者の設置、リスク管理体制の構築などが評価されます。 経営層のコミットメントも重要な評価ポイントです。

 

2. 技術的対策
ファイアウォール、ウイルス対策ソフト、アクセス制御、暗号化などの技術的なセキュリティ対策が対象です。 最新の脅威に対応できる体制かどうかも確認されます。

 

3. 物理的対策
サーバールームの入退室管理、監視カメラの設置、機器の盗難防止策などが含まれます。

 

4. 人的対策
従業員へのセキュリティ教育、アクセス権限の適切な管理、退職者の権限削除などが評価されます。

 

5. インシデント対応
事故発生時の対応手順、事業継続計画(BCP)、復旧体制の整備状況が確認されます。

 

評価レベルの段階

 

評価は複数の段階に分かれており、企業は自社の状況に応じたレベルを目指すことができます。

 

レベル 対象 主な要件 評価者
★(1つ星) 全企業 情報セキュリティ5か条の実施 自己宣言
★★(2つ星) 一般取引先 基本方針の策定・公開 自己宣言
★★★(3つ星) 一般サプライヤー 初期侵入防御など基本対策(25項目) 専門資格保有者によるチェック
★★★★(4つ星) 重要サプライヤー 被害拡大防止を含む発展的対策(44項目) 専門機関の審査
★★★★★(5つ星) 重要インフラ等 高度・未知の攻撃への対応力 専門機関の審査

 

中小企業の場合、まずは1つ星レベルの達成を目指し、取引先の要求に応じて段階的にレベルアップしていくことが現実的です。

 

★3の主な内容

 

★3は「すべてのサプライチェーン企業が最低限実装すべき」基本的な対策レベルです。 初期侵入の防御に焦点を当てており、外部からの攻撃を水際で食い止めるための対策が中心となります。

 

求められる主な対策(計83項目)
・ユーザIDとアクセス権限の適切な管理
・ファイアウォール(UTM)による通信制御
・エンドポイントへのウイルス対策ソフト導入
・OS・ソフトウェアの脆弱性対応

・バックアップ
・基本的なログ管理とモニタリング
・従業員への最低限のセキュリティ教育

 

評価は年1回、所定の研修を受けた専門資格保有者によるチェックで行われます。 中小企業を含む一般的なサプライヤーが最初に目指すべきレベルと位置づけられています。

 

★4の主な内容

 

★4は「標準的に目指すべき」発展的な対策レベルで、★3の項目に加えて合計44項目が求められます。 単なる初期侵入の防御に留まらず、被害拡大防止攻撃者の目的遂行リスクの低減までカバーする高度な対策が必要です。

 

★3に加えて求められる分野(計74項目)
・ガバナンス整備(経営層を含むセキュリティ管理体制)
・取引先管理(委託先のセキュリティ確認)
・リスク特定(脅威・脆弱性の継続的評価)
・攻撃の検知・防御(EDR・SIEM等による高度な監視)
・インシデント対応・復旧(BCPを含む体制整備)

 

 

評価は3年に1回、外部の専門機関による第三者審査が必要です(年1回の自己評価も必須)。 重要インフラ関連企業、機密情報を扱う企業、サプライチェーンの重要な位置にある企業が対象となる見込みです。

 

中小企業が取り組むべき具体的な対策

 

評価制度に対応するために、中小企業が今すぐ始められる具体的な対策を紹介します。 コストや人員に限りがある中小企業でも実践可能な方法を中心に解説します。

 

まず取り組むべき基本対策

 

以下の対策は、コストをかけずにすぐ始められるものです。まずはここから着手しましょう。

 

・OSやソフトウェアを常に最新の状態に更新する
・すべての端末にウイルス対策ソフトを導入する
・強固なパスワードポリシーを設定し、定期的に変更する
・重要データの定期的なバックアップを実施する
・従業員向けのセキュリティ教育を年1回以上実施する

 

体制整備のポイント

 

技術的な対策だけでなく、組織としての体制整備も重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。

 

・セキュリティ責任者を明確に任命する(専任でなくても可)
・セキュリティポリシーを文書化して全社に周知する
・インシデント発生時の連絡体制と対応手順を決めておく
・定期的にセキュリティ状況を確認し、改善を続ける

 

外部サービスの活用

 

社内リソースだけでは対応が難しい場合、外部サービスの活用も有効です。 特に以下のようなサービスは、中小企業でも比較的低コストで導入できます。

 

・クラウド型セキュリティサービス(統合型の脅威対策)
・セキュリティ診断サービス(脆弱性の定期チェック)
・マネージドセキュリティサービス(監視・運用の外部委託)
・サイバー保険(万が一の被害に備えた保険)

 

評価制度導入による企業へのメリット

 

評価制度に対応することで、企業は様々なメリットを得ることができます。 単なるコスト負担ではなく、ビジネス上の価値として捉えることが重要です。

 

取引上のメリット

 

・大企業との取引継続・拡大につながる
・入札や契約時の競争力が向上する
・新規取引先の開拓がしやすくなる
・取引先からの監査対応がスムーズになる

 

今後、大企業がサプライヤー選定の基準として評価制度の取得を求めるケースが増えると予想されています。 早めに対応することで、将来の取引機会を確保できます。

 

経営上のメリット

 

・サイバー攻撃による事業停止リスクを低減できる
・情報漏洩による損害賠償リスクを軽減できる
・社内のセキュリティ意識が向上する
・経営者としての責任を果たすことができる

 

セキュリティ対策は「コスト」ではなく「投資」として考えることが大切です。 適切な対策により、企業の持続的な成長を支える基盤を作ることができます。

 

今後の動向と準備すべきこと

 

評価制度は今後さらに整備が進み、より多くの企業に影響を与えることが予想されます。 将来を見据えて、今から準備を始めておくことが重要です。

 

想定される今後の展開

 

・政府調達における評価取得の義務化
・大企業による取引条件への組み込み
・業界団体による自主的な基準策定
・国際的な相互認証の仕組み構築

 

特に防衛産業や重要インフラ関連の取引では、早期に厳格な基準が適用される可能性が高いです。 該当する業界の企業は、優先的に対応を進めることをお勧めします。

 

今すぐ始められる準備

 

・自社の現状のセキュリティ対策レベルを把握する
・不足している対策を洗い出し、優先順位をつける
・セキュリティ対策の予算を確保する
・信頼できるセキュリティベンダーとの関係を構築する
・業界の動向や制度の最新情報を継続的にチェックする

 

制度が本格化する前に準備を進めておくことで、慌てずに対応することができます。 まずは自社の現状把握から始めてみてください。

 

まとめ

 

サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度は、中小企業にとっても無視できない重要な取り組みです。 サイバー攻撃が高度化・巧妙化する中、企業規模を問わずセキュリティ対策の強化が求められています。

 

評価制度への対応は一見ハードルが高く感じるかもしれませんが、段階的な取り組みが可能です。 まずは基本的な対策から始め、徐々にレベルアップしていくことで、確実にセキュリティ体制を強化できます。

 

大切なのは、セキュリティ対策を「やらされるもの」ではなく、「企業価値を高める投資」として捉えることです。 早めの対応で、取引先からの信頼獲得とビジネス機会の拡大につなげていきましょう。

 

 

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